琵琶とシルクロード

文京区役所の小ホールへ、薦田治子さん司会の「日本の響き、世界の調べ―琵琶とシルクロード」(東京2020応援プログラム)を聴きに行きました。リュート系の弦楽器を聞き比べようという催しです。平家琵琶、ウード、中国琵琶、リュート、薩摩琵琶の演奏が並んでいました。

ウードには4分の1度という音程があるそうで、それがいわゆるアラビア風の流れるような音階を創り出します。中国琵琶は初めて聴いたので、トレモロ奏法を中心としながら力強さ、激しさ、優美さを自在に生み出せることに吃驚しました。ルネッサンスリュートが私にはなじみ深い優しい音で、癒やされました。ものにはなりませんでしたがギターを習ったおかげで、奏法と絃の感触の関係がよく分かり、ビブラートやトレモロの魅力も理解出来ました。何でも体験しておくものだなあと思った次第です。

平家琵琶の奏者は山田流箏曲の奏者でもあるそうで、声はよく出ていましたがいまいちむらがあり、平家語りらしくなるには未だ山坂越えねばならないのではと思いました。解説者の薦田さんが「皆さんは平家物語を文学だとお思いでしょうが、じつは音楽だというのが正しい」と言ったのには、思わず首をかしげてしまいました。音楽としての享受と文学としての享受とは並行していた、と言うのが正しい。

最後の薩摩琵琶「壇ノ浦」(演奏中村鶴城)には、300人満席の会場がし~んとなり、日本人の感性に今なお強く訴えかけるのはこれなのだ、と認めざるを得ませんでした。悲哀と慷慨とが、強弱こもごもの琵琶の音とほどよくマッチしています。

このホールの椅子が粗末で、隣席の人の身動きいちいちにぐらぐらするのには閉口しました。2020までには何とかして欲しい。