ロゼット

辞書で言葉を覚えることがあります。芥川龍之介は辞書に「みつせ川」という語を見つけた時、美しい言葉だなあ、と、うっとりしていたという思い出話を読んだことがあります(私もその時、この語を覚えました)が、子供の頃、植物図鑑の用語集で「ロゼット」という語を見つけました。ある種の植物が冬越しのために取る形態です。放射状に地面にぴったり葉を広げて、薔薇の花模様のようになることを言います。植物の種類によること、冬越しの知恵であることを知って、印象づけられました。

今年は寒さの来るのが早いようで、道を歩くと蒲公英やハルノノゲシのロゼットが目につくようになりました。葉の大きさも均等に揃ってきれいな形のものが多い。中には敷居際などに生えたため、直角に折れた円形もあります。子供時代に千代紙を折って切り込みを入れて作ったレースペーパーや、万華鏡を思い出し、つくづく自然の造形のみごとさに感心してしまいます。

薺や種付け花、田芹もロゼットになりますが、未だ芽を出していないらしい。それらに気づく頃には、迎春の準備が始まるでしょう。