この道やゆく人なしに

ちょっと視点を変えると展望ががらりと変わって見えてくる場合があります。例えば、組織やコミュニティで(時には家族の中でも)、あの人がいるおかげで、とか、あの人がいなかったら何もできない、と衆目一致しているようなときに、ひょいと立ち止まって別な眼で見てみると、あまりにその人が頑張りすぎ、あるいは出来すぎるために後継者が育たない、またみんなが寄りかかりすぎて微妙な弊害が出ている、といったことがあるものです。

それは人物の善悪に拘わらず、成果の多寡に限らず、人的構成の問題です。誰か1人に任せておけば楽だけど、じつは他の人たちの可能性を遮断し、他の実現手段を選択肢に上げる前に潰してしまっていることがあるのです。

そういう例を今まで何度か見てきました。たいてい、誰も気づいていないので口には出さずに済ませ、そのうち私の方がその組織とは縁が切れることが多かったようです。あるいはもう別れどき、という時機になって見えてくることなのかも知れません。思いきって別の道へ廻ろう、と声を上げ、その結果を見届けるべきなのでしょうが。やむを得ずおっかなびっくり次善の道を辿ることになり、後日、ああこれで正解だった、と思ったことも何回かはあった気がします。

この道しかない、この人しかいない、と言われたら、ちょっと立ち止まる―秋の暮に思うことです。