オクラ

子供の頃(未だ戦後の食糧不足時代です)、裏庭でオクラを栽培したことがありました。花が綺麗なので野菜とは思えませんでした。黄蜀葵にそっくりですが、薄黄色の花弁の底が臙脂色で、ハイカラな感じなのです。ただ一日花なので、切り花にはできません。当時国内では珍しい食材でしたが、どんな料理になったかは記憶がありません。味噌汁に入れたか、祖母が作る「お命日」の精進料理で煮しめにしたか、でしょう。我が家の栽培は1年限りだったようです。

月に1,2回、「お命日」といって祖母が夕飯を作る日がありました。縁者の誰かの命日に、精進料理を小さな漆器の夫婦膳に盛りつけて仏壇に供えるのですが、祖母は必ず漆器の蓋に1口ずつ料理を取り分けました。質問すると、「これは餓鬼の分」という答えでしたが、子供には何のことだか分かりませんでした。一家の主婦にとっては骨休みの日になったでしょうが、子供心には見た目も味も楽しくない夕食でした。

私は川田順造さんの本で、アフリカでスープの具として好まれる食材と知ってから、愛用するようになりました。スープの具にしたり煮付けたりしますが、天麩羅やカレーの具でも美味しい。ウェブ上にはいろいろ素敵なレシピが載っていて、すっかりポピュラーになったことを知りました。それにしても、八百屋ではどうして青いネットに入れて売るのでしょうか。傷や黒ずみが見えず、何度も厭な思いをしました。食べて不都合がないのなら、生産者は堂々と見せて売って欲しい。