薬玉と鳩

近所の小学校で運動会の応援練習が始まりました。以前は我が家からも運動場が見えたのですが、間にマンションが建って見えなくなりました。

中学時代の運動会では、競技だけでなく応援のアイディアも加点されたので、チームごとに知恵を絞りました。ある年、花形競技のリレーのスタートで薬玉を割って鳩を出そう、ということになりました。女子は笊を貼り合わせて薬玉を作り、男子3人が護国寺へ鳩を盗みに行きました。なかなか帰って来ない。どうやら1羽、スポーツバッグに入れて戻ってきました。ベンチに座って餌を撒き、鳩が集まったところで少しずつベンチを動かして近づく。ところが門衛が見ていてベンチを動かすなと注意されるので、また初めからやり直すーその繰り返しで時間がかかったのだそうです。

翌る日、いよいよリレーの号砲が鳴り、薬玉が割れました。鳩は、ぽたりと地面に落ち、飛びません。追い立てても、きょときょとと歩き回るだけ。その間にリレーは終わりました。一晩スポーツバッグに閉じ込められて飲まず食わず、しかも急に明るい所へ出た鳥目なのですから、今思えば無理もありません。しばらくして鳩は無事に護国寺の方へ飛んで行きました。

当時の競技には長い名前のついたものがあって、例えば「忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず」というもの。片手に栗の毬、片手に泥鰌を掴んで走る徒競走です。優等生たちが苦戦する中で、腕白男子がわざと泥鰌を地面に落とし、土をまぶしてから掴み直したのには感心しました。