和文の切れ目

沼尻利通さんの「『枕草子』「春はあけぼの」条の諸問題」(「西日本国語国文学」4)を読みました。枕草子冒頭の、かの有名な段の解釈(区切れ)をめぐる諸説を整理し、考察しています。教材研究には便利でしょう。

春はあけぼの*やうやうしろくなりゆく@山ぎは*すこしあかりて*紫だちたるのほそくたなびきたる。

誰でも暗誦できるほど有名な文章ですが、もともと古文には句読点は打たなかったので、現代文のように明快な句切れがあるわけではない。上記の@に句点を入れ、*は切らずに続けて読むこともできるのではないか、いやその方が正しく解釈できるのではないかと問いかけています。枕草子はそもそも和歌的な文体なので、下線部は掛詞のようにつながっているのだというのです。

和文の句切れを現代の活字本の句読点で明示しようとするのは無理がある、ということは本文作りの経験者なら誰しも痛感することです。せっかくの和文体の魅力を殺してしまいかねません。学校ではここには◯◯が省略されている、などと教えますが、自分が生徒だった時から、どうも納得がいかないままでした。せめて高校3年くらいで、和文・和漢混淆文・候文などの味の違いを知る時間が欲しいと思ったりします。