擬人化と異類合戦

伊藤慎吾さんが『擬人化と異類合戦の文芸史』(三弥井書店)という本を出しました。まず、装幀が楽しい本です。表紙、見返し、帯にも妖怪がうようよ。中にも挿絵がたくさん入っており、資料を日常的に博捜している伊藤さん(この「日常的に」は誰にでもできることではありません)ならではの、サービス精神満載です。

内容には非常勤先の講義ノートが活かされているようで、教育と研究を両立させなければならない年代の仕事として相応しいことにも、好感が持てました。項目を拾ってみると、「擬人化の図像の型」、「異類・変化(へんげ)・擬人化キャラクターの造形」、「異類合戦物の表現」等々、見ただけでわくわくするタイトルが並んでいます。伊藤さんは以前からずっと、文芸における擬人化というテーマに関心を持ち、メルアドにもgijinkaという文字を入れているくらい打ち込んでいるので、話題が豊富です。

序の「擬人化の文芸史」で試みている分類などは、もう少し整理して欲しいという気もするのですが、今後補訂されていくことでしょう。惜しむらくは、ところどころに?をつけたくなる誤植があったり、目次の章立てが本体に反映されていなかったりして、造本の配慮が欠けている感じがすること。読者層が広い本でしょうから、ちょっと残念。