古筆切研究

小島孝之さんの論文2本を読みました。

新出田中親美氏旧蔵「藤原定家筆書状案」の紹介と考察(「成城文芸」240)

古筆切拾塵抄・続(九)―入札目録の写真から―(「成城国文学」33)

前者の切は個人蔵。定家が建暦元年9月22日、叙位任官の拝賀について新蔵人家資に連絡した手紙の控えに、後日、津守経国から依頼されていた住吉社への奉納歌をメモしたものであることを解明した上で、附属書類や野村美術館蔵の写しについても考察しています。単なる資料紹介に留まらず、丁寧な追跡・考証が味わえます。

後者は、過去の入札目録類から、他に紹介されていないものを中心に写真転載と翻字をしており、彼がずっと連続して行っている作業です。あまり学問的とはいえないように思われそうですが、古筆切の厖大なデータベースを構築しようとしてこつこつやっているのらしい。大学の演習でも多様なジャンルの古筆切をとりあげていたようです。同じく文学を専攻しても、こういう、コレクションに情熱を注げる人と私とは、つくづく性格が違うんだなあと、妙な感服のしかたをしています。畏友というのでしょうか。