奨学金問題・その2

6月下旬に奨学金問題を扱った新書がさらに1冊出たことを知りました。

今尾晴貴『ブラック奨学金』(文春新書)

私は未だ読んでいませんが、ネット上に要約や読者の感想が出ていますので、およその内容を知ることができます。統計の数値は、恐らく2月に出た『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新書)、『奨学金地獄』(小学館新書)と共通していると思いますので、改めてここでそれらを繰り返すことはしません。

ただ、次のような問題点はひろく認知して欲しいと思います。①奨学金制度は2004年を境に大きく変わってしまったのに、親・教師の世代がそれを十分理解していないこと、②ローンやクレジットカードの普及に伴って「借金」を怖いと思う感覚が鈍麻したこと、③ライフサイクルの変化により子の進学と親の定年がぶつかる場合が多くなったこと、④以上にも関わらず高等教育の費用は右肩上がりに上がり続けていること(国公立教育機関の授業料が私立に接近し、努力次第で安い学費を選べる機会がなくなった)。殊に①については重要です。当時、奨学金の返済率があまりに低くなり、育英会の事務方の怠慢だと批判が強かったことは覚えているのですが、その結果、今のようなシステムに変えられたことを詳しくは知りませんでした。通常、貸し付けに当たっては返済能力の審査があるのに、奨学金では将来の事情は分からぬまま(現況では、大学を出たからといって定収のある職に就けるとは限らない)貸すのだから、回収に当たって闇金サラ金並みの取り立てをするのはおかしい、という指摘は尤もだと思います。②についてですが、親は奨学金を借りるに当たって、子自身に当事者であることをよく認識させて欲しいものです。通常の住宅ローンでもなかなか元金は減っていかず、およそ借りた額の2倍を返す心算でいろ、というのは常識でしょう。奨学金ではその上、ややこしい延滞金制度などがあるのです。

私がこの頃の奨学金はどうも変だ、と思い始め、友人の「奨学金という名称は詐欺に近い」という言葉を理解出来るようになった経緯は、また別に書きたいと思います。高校の進路指導担当者、大学人、そして文部官僚と文教族の議員には、ぜひこの問題を我がこととして考えるよう、望んでやみません。