日本史の友人から、手嶋大侑さんの論文について感想が寄せられましたので、了解を得て掲載します。
【手嶋さんの論文を4本読みました。
①年官制度発生に関する一考察―貞観13年藤原良房第二抗表をめぐって―、「人間文化研究」21
②「三宮」概念の変遷と「准三宮」、「人間文化研究」23
③年官制度の展開―中央と地方の連関―、『明日へ翔ぶ―人文社会学の新視点―4』(風間書房)
④平安中期の年官と庄園、「日本歴史」830
①では、良房の第二抗表の読解が中心になっています。難しい史料です。
②は三宮と三后は同じものという、常識的な理解を覆す論文で、なるほど、と思いながら読みました。
③④は、手嶋さんの研究が深まっていることが窺える論文で、非常に面白く読みました。年官が、中央の権門と地方有力者を繋ぐ手段として有用だったことや、それが地方有力者だけでなく、庄園の有効な支配を望む中央権門にとっても望ましい関係であったことなどが、史料を博捜して明らかにされていて、重要な論文だと思いました。いい論文を書かれていると思います。
私は、最近土田直鎮さんの『王朝の貴族』(中公「日本の歴史」)を読んでいます。名著だと改めて思いました。摂関期の貴族社会に関して、何にも知らないことを知らされています。むかし読んだ気はするのですが、すっかり忘れています。(錦織勤)】
かつて読んだはずの研究書を読むと、見落としていたこと、当時理解出来ていなかったこと、知らずに自分が影響を受けていたことなどを改めて気づかされ、あの本もこの本も読み返したくなります。かくてツンドクの山は低くならぬまま、時は過ぎゆくのです・・・