往来の文化学

内田澪子さんの「長谷寺「銅板法華説相図」享受の様相」(『ひと・もの・知の往来―シルクロードの文化学』勉誠出版)という論文を読みました。内田さんはこのところ長谷寺縁起とその周辺を探究しており、この論文では国宝「銅板法華説相図」の享受と長谷寺縁起文・長谷寺験記・長谷寺縁起絵巻などの関わりを展望しています。

シルクロードという言葉は、一帯一路などと違った浪漫の響きがあり、私たちを今もわくわくさせます。それを書名に取りこんだ本書は、2014年秋に行われた二つの国際フォーラムの成果をもとにしたもので、16名の各国の研究者が、仏教を中心にさまざまな文化の伝播をテーマとして論じており、キラキラした序跋がつけられています。果たしてどれだけの人が、本書を手に取って読み通せるか―必ずしもとりつきやすい本ではありませんが、それぞれにひたむきな論文です。

話題が広すぎて、と言いたくなりますがふと、あれもこれも源平盛衰記に結びついていくことに気がつきました。中央アジア叙事詩「アルポミシュ」、聖徳太子伝、釈迦堂縁起・・・私は源平盛衰記に手を引かれて、それらの論考を読みました。