境界と女と絵巻

恋田知子さんの『異界へいざなう女―絵巻・奈良絵本をひもとく―』(平凡社)を読みました。境界を超えた異界への案内者として、また創作者、享受者、伝播者としての女性を中心に据えて、中世から近世への物語や絵巻の誕生と享受について楽しげに語った本です。ブックレットなので持ち歩いて読むのによく、これを教科書代わりにして恋田さんの講義を聴きたかった、と思う方もいるかもしれません。

私としては第二章の源氏供養のことと、第四章の真盛上人伝の絵巻制作の話が面白かった。女が語る「女性の◯◯」、という題目設定は大嫌いで、そういう企画とは一切関わり合わないことにしている私ですが、この二章はそういう枠組とは無関係に、興味が持てました。同時に近年の学界のあれこれの動向の成果が、こういうかたちで反映していることも理解できました。