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國學院雑誌3月号

國學院雑誌3月号を読みました。伊藤悦子さんの「久留米文化財収蔵館寄託「合戦絵巻」について」が載っており、「平治物語絵巻」六波羅合戦巻の新出模本について考察しています。この資料は伊藤さんが2014年に自分で調査して発見したものですが、同年、早稲田大学図書館でも新たに模本を収蔵、滝沢みかさんが紹介しています(早大図書館紀要 2015)。平治物語は早い段階で絵巻が作られ、一部現存していることが軍記物語の中でも顕著な特徴で、六波羅合戦巻の部分は断簡と模本しか残っておらず、近世末期の資料であっても今後の解明が俟たれます。

同誌には津島知明さんの「『枕草子』「香炉峯の雪」と「三月ばかり」の段を読み直す」も載っています。教材研究には必読。教室では章段を切り取って読むため、清少納言の自讃談・失敗談とだけ読まれがちだが、前後の配列や定子サロンの当時の状況を加味して読めば、べつのことがわかってくる、と論じています。

清少納言がなぜ枕草子を書いたのか。漢文の素養や定子の寵愛を鼻に掛けたイヤな女の自慢話、というレッテル貼りは、さすがにもうないでしょうね。平家物語でも、長編全体を見ずに一部だけ切り取って決めつけ、さらにそれをステロタイプに批判する、といった論調が近年見られます。拙稿「眼で聴き脚で見る」(『ともに読む古典』笠間書院)ではそれに反論しました。