池澤夏樹個人編集

池澤夏樹個人編集日本文学全集の『平家物語』(河出書房新社)をひろい読みしました。訳者古川日出男さんの作品を読んだことがないのですが、現代語訳は一言で言うと、騒々しい。改めて古文のもつ可能性を知らされました。しかし古川さんの「前語り」や月報の高畑勲さん・安田登さんのコメントは、平家物語の現代の読者として、いい線を行っています。思うに「琵琶法師の語り」という幻想に囚われすぎたのではないでしょうか。

買って置いた同全集の『日本語のために』を引っ張り出して斜め読みしました。意欲的な編集です。たのしく、そして知的興奮を呼び覚ましてくれます。高橋源一郎さんの終戦詔書の訳はちょっと意外でした。ご本人の創作を併せて読むべきなのでしょうね。

この全集は読者にとっても新鮮で有益ですが、何よりも執筆者たちにとって有益だったのではないでしょうか。憾むらくは本が厚すぎること。今どきこれを片端から読破する暇は誰にも得がたいのでは。