帝都

久しぶりに上京した友人と新丸ビルで待ち合わせして、ゆっくりランチを摂りました。高層ビルの隙間から皇居の櫓が見えます。明後日の東京マラソンのゴールが、今年からこの辺になったとの噂をしながら、オールドスタイルの洋食を味わいました。

初めて皇居前へ親に連れられてきた時は、お濠が硬く凍り、死んだ魚の眼のようだったことを思い出します。未だ戦後復興が始まったばかりでした。何年か後、郷里から上京した親戚を案内した時は、お濠端一面に蒲公英が咲き満ちていた記憶が鮮やかです。

数年前、ある日本史の学者(熊本出身)が新装成った駅前の広場に立ち、「なるほど東京は帝都なんですね、駅から真っ直ぐ行幸通りが皇居へ向かっている!」と興奮気味でばちばち写真を撮りまくり、東京人の私たちは、初めてそのことに気づいて呆然としたものでした。

エスカレーターで降りながら、壁に填め込まれた金属製のレリーフやシャンデリアの笠に眼が留まりました。田中後次の仕事を思い出したのです(「西と東」参照)。