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高畠華宵の月

寒さは厳しくても日脚が延び、残照から黄昏にかけての空に、早春への期待を感じます。遅くなった買い物に出ると、宵の明星と三日月が藍色の空に鋭く金線を象眼していて、私はこういう三日月を、ひそかに「高畠華宵の月」と呼ぶことにしています。子供の頃、従姉たちからのお下がりの少年少女文学全集や雑誌「幼年倶楽部」の挿絵で、この画家に夢中になりました。伝記を見ると、彼にとっては失意の時代だったようですが、私はその当時も一世風靡の画家だとばかり思っていました。耽美的だが清潔感の(やや冷たさも)ある画風でした。殊に印度の姫君などの絵は、挿絵そのものがそれだけで物語でした。背景にはよく三日月や異国の塔や薔薇の花が描かれていたのです。