天災

一昨日の晩、にわかに消防車のサイレンが間近に続き、堪りかねて窓から覗いたら、我が家の前に車列をなして停まっているので吃驚。近所のぼやだったようで、飛び出してきた隣人たちと顔を見合わせ、胸をなで下ろしました。 翌日、つまり昨日は台風19号の接…

カードサイズ

現役時代、結構な額の健康保険料を払っていた時期は(頑健だったからではなく)、忙しくて医者にはかかれませんでした。たいていの症状は、1食抜いて腹を温めて寝るとか、父親が作ってくれた卵酒を飲んで早寝する、とかで治しました。それゆえ、健康保険証…

宗尊親王

中川博夫さんの『竹風和歌抄新注』(全2冊 青簡舎)という本が出ました。上下合わせて1200頁を越える大著です。『竹風和歌抄』は、後嵯峨院の第3子宗尊親王が自ら晩年の定数和歌を集めて編んだ家集で、樋口芳麻呂氏が発見した孤本があるのみ。 宗尊親…

マスク

整形外科へ鎮痛剤を貰いに行きました。60歳前後から腰痛がひどくなり、特に朝、歩き出しが痛むので使うようになったのです。通勤しなくなったので、今は週に1,2回しか使いませんが、ぎっくり腰をやって以来、常備していないと不安です。 この街でかかっ…

矢来町

内扉に葡萄の房をデザインした文庫本は、かつて私の本棚にかなりのスペースを占めていました。文芸書で有名でした。市ヶ谷の定時制高校に3年ほど勤務した頃は、時々社屋の傍を通り、社員らしい、質素だけど視線のしっかりした人たちとすれ違いました。 それ…

駆武者

原田敦史さんの「『平家物語』の駆武者」(「日本文学研究ジャーナル」11号)を読みました。川合康さん以来の反「平家物語史観」論(最近流行の「◯◯史観」は、粗暴な用語です)に対し、作品本来の「読み」を足場に、反撃しています。覚一本の「駆武者」は…

揚羽の蛹

午前中から、眼科の定期検診に出かけました。受診は1時間半くらいで終わったのですが、会計が混んでいて、正午までかかりました。3年前にここで消化器の大手術をした長野の友人が、付き添いの妹さんと共に上京、午後から主治医の診察を受けるというので、…

台所用洗剤

親の家に残っていた古い台所用洗剤を使ったら、久しぶりに主婦性湿疹が出ました。我が家は欠けやすい陶器が多いので、家事用手袋は使いません。しかしひび割れが痛い程になってきたので、思い切り薄めて使うことにし、当座の問題は解決しました。 台所用洗剤…

サバイバル

漆工芸作家の藤澤保子さんから手紙が来ました。木地捜しから造形、漆塗り、蒔絵まで一貫してやっている人です。中学時代の同級生。体の弱かった2人は、体育の見学仲間でもありました。女の子にありがちな虚勢やそねみのない、気持ちよく話せる人だったこと…

塩害

洋梨を煮ました。仏壇に上げていたものを、もういいだろうと剝いてみたら、半分は包丁が立たないほど堅い。やむなくざくざく切って、シーバス・リーガル(英国人と結婚している従妹のお土産です。我が家に残った、最後の強い酒)少々と砂糖6gを入れ、ひた…

源平の人々に出会う旅 第33回「神戸市・小宰相と通盛」

寿永3年(1184)年2月、一の谷合戦で多くの公達が討たれましたが、平教盛の子・通盛もその一人です。通盛の北の方・小宰相は通盛の死を嘆き悲しみ、夜の海に入水してしまいます。 【氷室神社】 一の谷の平家の陣内では、通盛が弟教経の仮屋で小宰相と…

数字への疑問

統計の読み方、数値の意味に正しくつきあうことの難しさ、その目くらましの危うさを知れば、ぎょっと、もしくはぞっとすることが少なくありません。近年、そのストレスはますます増えてきたようです。 最低賃金は上がり続けているが、全労働者の賃金の中位数…

ミナト君のお母さん

音楽好きのミナト君、1クラス6人の特別支援学級の1年生になって半年が過ぎました。7歳になり、平仮名を覚え、今年はクラス全員の給食を受け取る係をしているそうです。放課後は学童保育に通っていたのですが、夏休みは昼間傍にいてくれる人がなく、お母…

平家物語を繙く

清水由美子さんの『平家物語を繙く』(若草書房)という本が出ました。ここ20年間に執筆した論文をまとめた、410頁を越える1冊。第一部『平家物語』と宗教と歴史、第二部『平家物語』と東国の歴史、第三部『平家物語』と中世の女性、という構成になっ…

積木的議論のために(5)

かつて原潜寄港反対や核持ち込み反対運動が行われた頃、私は未だ院生でしたが、早く結婚した幼なじみの友人は、市民運動の中で環境問題や平和運動に取り組んでいました。夫婦と食卓を囲んだ時、「学生たちの気持ちは分かるけど、過激な挑発をされると却って…

義務教育

今朝の新聞報道によれば、義務教育年齢に当たる滞日外国人の子供で、未就学者が2万人近くに上るというー目を疑いました。日本で暮らしながら基本的な教育を受けられないでいる子供たちの数が、5桁にもなっているなんて。日本はそんな国だったのか、という…

仙台行き

10月末の仙台行きの切符を買いに行きました。午後早く行ったのですが、みどりの窓口の行列は、6~7割が外国人でした。30分ほど並んで目的の切符を購入、駅地下のカフェでパンを買い(行きつけのパン屋が閉めてから、あちこちでパンを買ってみているの…

部立

古家愛斗さんの「『千載集』編纂にみる藤原俊成の神祇歌観」(日文協「日本文学」6月号)を読みました。藤原俊成が『千載和歌集』撰集に当たって、神祇部への入集基準をどのように定めていたかを考察し、俊成の神祇歌観を明らかにしようとするもの。 まず藤…

風害

台風15号の影響は我が家では大したことはなかった、と思っていたのですが、今頃になって菊や日々草の一部が枯れ始め、よく見ると、根こぎにぐるぐる吹かれたらしく、茎の根元が潰れたり、根が浮き上がっていたことが判明、彼等も苦しかったんだなあと思い…

積木的議論のために(4)

「古典は必要か」もしくは「文学は必要か」というタイトルで議論するのは、不毛な気がします(ツイッターには、まるで揚げ足取りのような問答―じゃ、◯◯は必要?✕✕は?といった―が出ていて、どちらにも気の毒な気がしました)。何のために、とか、現在と未来…

熊楠の妖怪研究

伊藤慎吾・飯倉義之・広川英一郎『怪人熊楠、妖怪を語る』(三弥井書店)という本が出ました。あとがきによれば、2016年7月から9月、紀伊田辺の南方熊楠顕彰館で行われた特別企画展「熊楠と熊野の妖怪」の準備の中から生まれた本だそうです。博物学の…

樹木たちの生活

ペーター・ヴォールレーベン『樹木たちの知られざる生活―森林管理官が聴いた森の声―』(長谷川圭訳 早川書房 2018)を読みました。2015年にドイツでベストセラーとなった本を翻訳、文庫化したものです。著者は1964年生まれ。大学で林業を学び、…

ポイント制

扇屋へおはぎを買いに出かけました。野上弥生子の愛した老舗です。店は年配客で混んでいました。もう初冬のゆず餅が出ています。仏壇に上げるので、父の好みの粒餡と黒胡麻のおはぎを1個ずつ買いました。まもなく消費税が上がります。扇屋にもちょっと腰掛…

鵺の正体

母校の中世文学研究会に出かけました。今年度は院生の入学が1名だけだったそうで、今後は年2回の開催とのことでしたが、今日は20人程度の参加者がありました。発表は2本。1本目は岡本光加里さんの「『千五百番歌合』における先行作品摂取と同時代歌人…

房総半島

西の方から羽田へ帰ってくる時、たまに飛行機は房総半島を旋回しながら降りていきます。九十九里浜の弧が目に入って来るまで、かなり盛り上がった山林地帯が続き、一体どこかな、と思ったりしたものでした。千葉県が広域な山と森であることを、首都通勤圏と…

積木的議論のために(3)

学部時代(52年くらい前です)、近世文学の先生が授業時に、「無用の用」論をぶったことがありました。その当時から、大学教育に文学は必要なのかという論調はあったのです。先生は、田の畔がなければ田は作れない、という『老子』の一節を引いたのですが…

パン屋の開業

行きつけのパン屋が突然閉店し、あちこちでパンを買ってみては失望を繰り返していましたが、久しぶりに通ってみると、新規開店の予告が出ていました。その後開業延期の貼り紙が出て、何度も無駄足を踏みましたが、やっと開いたので入ってみました。 以前は3…

枕草子本文

沼尻利通さんの「東松本『大鏡』裏書所引枕草子本文の検討」(「福岡教育大学 国語科研究論集」60号)という論文を読みました。『大鏡』はもともと巻子本仕立だったらしく、裏書があります。その中に引用されている『枕草子』の本文が、どの諸本に近いかを…

積木的議論のために(2)

たくさんの人を見てきて、就中その晩年を見るようになって、つくづく思うのは、人の一生には、消費的人生と、(何がしかの)生産的人生とがあるのだなあ、ということです。どちらが上ということはありません。「生産」とは、子供を作るとか物作りを仕事にす…

全訳注平治物語

谷口耕一・小番達共著『平治物語 全訳注』(講談社学術文庫)が出ました。 文庫本とはいえ650頁を越え、情報のびっしり詰まった1冊です。谷口さんは永年、平治物語の注釈稿を抱え続け、紆余曲折を経ていま会心の著として世に出すことになりました。 底本…