日々雑録

躑躅の街

朝、顔を洗おうとしたところで、ピンポーンが鳴りました。宅急便にしては早すぎる、ゆうパックならロッカーへ入れて行くだろうと思って、インターホンの映像を呼び出してみると、何やら装備万全の男たち。消防署だが階下の家に立ち入る必要があるので、ベラ…

書評京都の中世史

松薗斉さんの「『京都の中世史➀摂関政治から院政へ』を読む」(季刊「古代文化」3月号)を読みました。吉川弘文館から出た叢書『京都の中世史』第1巻(編集代表元木泰雄)の書評ですが、通史としての立脚点、企画構成そのものから論じています。私は本書を…

サプリメント

紅麹なるものは今まで知らなかったのですが、食品の色付けやサプリメントに広く使われていたのだそうで、原因は不明なまま病害を引き起こしたことで有名になりました。服用していた人たちは、麹なら天然素材という安心感があったと思います。薬もワクチンも…

花の名残り

今日あたり、桜前線は津軽海峡を渡っているでしょうか。我が家のベランダでは紫蘭や立浪草が咲き始め、石榴の蕾が赫い新芽の間から見えるようになってきました。紫蘭は根茎が伸びるので、鉢の縁に沿って芽を出しますが、我が家の小さい鉢では日に向かって傾…

維盛の高野巡礼

谷口耕一さんの「延慶本平家物語における維盛の高野巡礼ー延慶本特有の語句の由来をめぐってー」(『古代中世文学論考』第52集 新典社)という論文を読みました。 平家物語巻10は一の谷で捕らえられた重衡と、それ以前に脱落した維盛の物語が主な内容と…

川越便り・清雲寺篇

川越の友人から、花を追ってドライブした、と写メールが来ました。 清雲寺の枝垂桜 【秩父の清雲寺は、我が家からは国道299号線でほぼ一本道で秩父市まで、さらに山梨へ続く街道をまっすぐですから非常に行きやすい。毎年のように桜を見にいきます。 有名な…

古典籍の文献学

「書物学」25号『古典籍の文献学ー鶴見大学図書館の蒐書を巡る』(2024/3 勉誠社)という1冊が出ました。鶴見大学(総持学園)創立百周年記念事業の一環だそうです。鶴見大学図書館の蔵書の豪華さは有名ですが、目の利く専門家がいるからこそ出来るコレク…

去りゆく花

今年の桜は咲くまで散々焦らされて、咲き始めたらあっという間、満開直後から風雨に遭い・・・という具合で気が揉めました。枝垂桜も染井吉野も八重桜も殆ど同時に咲き始めてしまい(例年なら順次楽しめるのに)、見歩くのにも気が急きます。 まず長泉寺の八…

和田倉門

午前中は春の嵐。今日は丸の内に用があって、しかも背広で出かけなければならず、ビル風の街を歩けるかなあと、心配しいしい用意していると、昼頃から風が弱まりました。杖と傘とで両手が塞がるので、書類2枚だけどリュックサックを背負って出かけました。…

越前だより

この春、福井高専に赴任した大谷貞德さんから写メールが来ました。勝手の違う職場であたふたしている、とのことです。所在地は鯖江ですが、新幹線が通ったので、敦賀経由でぐっと便利になりました。HPを見ると、さすが工業専門学校、ストリートビューで校内…

日曜の構内

午過ぎ、朝刊を持って東大構内へ出かけました。樟の葉が新旧入れ替わる時季で、足元は大量の落葉。正門脇の桜は満開でしたが、周囲の根から蘖が群生し、まるで灌木の桜の藪のようです。老木になり、しかし染井吉野は実生で次世代を作ることができないため、…

HANAMI2024

午後から、恒例の花見に出かけました。長野の友人が、わざわざこのために上京して来て、待ち合わせました。最近できた商業施設で台湾料理の杏仁スムージーと胡麻団子を買い、東京都戦没者霊園のベンチでお八つ。2人ともスムージーは初体験です。桜は満開で…

水戸便り・サクラサク篇

40年近く前の教え子が水戸に住んでいて、ケータイで撮ったらしい写メールを送ってきました。一人娘が一浪して自治医科大学に入った、との知らせです。 サクラサク校舎 国産ロケットの打ち上げ見物や、ボーイスカウト(女の子も入れるらしい)や、防衛大学…

大和便り・三春滝桜篇

天気予報では今日が東京の桜満開日。しかし我が家の近辺では二,三分咲きです。長泉寺へ行ってみたら、境内では山桜が満開になり、どこにこんなにいたのかと思うほど沢山の蜜蜂が花の中を忙しく飛び回っています。老人2人がスマホ撮影して去り、プードルを…

川越便り・羽根布団篇

暫く別府で悠々老後を満喫していた友人が、川越に戻って庭の手入れをしている、というメールを送ってきました。早春を告げる、可憐な草花を植えた庭なのに、眺める主が留守で荒れていくのは想像するだけで寂しい、と言ってやったら、むっとしたようで、ちゃ…

古活字探偵15

高木浩明さんの「古活字探偵事件帖15」(「日本古書通信」1136号)を読みました。「徳富蘇峰と池上幸二郎」と題して、次回と連続の話題らしい。今回の話題は、蔵書家の独特の感覚で、取り合わせ本が新たに作り出される例です。 お茶の水と水道橋とを繋ぐ坂…

4月1日

朝刊を広げたら、見開き一杯に幾つも顔面アップの漫画のコマ、なんだこれ、と思ってよく見ると講談社の全面広告でした。「もしヤンマガキャラが先輩だったら」という大見出し。ヤングマガジンというコミック誌の宣伝のようです。 「中間管理職の意見ってのは…

信濃便り・福山観光篇

長野の友人が福山に旅行したから、と写メールを送ってきました。学生時代、寮で同室だったグループが、未だに年1回集まって旅行するのだそうです。60年近く経ち、それぞれ異なる暮らしをしているのに、すごい!女の友情は永続するか否かの議論なんて、問…

開花宣言の日

春の嵐が去って、アスファルトの地面もたっぷり雨水を吸い込み、やっと三月尽に相応しい天候になりました。一昨日若い人の首途の祝膳に出した鯛の頭で、潮汁を作って朝食。重い冬の掛布団を畳んで、軽い羽根布団を干しました。ベランダでは紫蘭の蕾が出て、…

古活字版から整版へ

岩城賢太郎さんの「『源平盛衰記』における古活字版と整版とー表紙裏古活字版反古無刊記整版本の調査報告を手掛かりにー」(「武蔵野文学館紀要」13 2023/3)を読みました。丹念な調査に基づき、元和寛永古活字版から乱版(1冊の中に古活字版と整版…

完食指導

「完食指導」という語があるのを初めて知りました。学校給食で1人前を残さず食べるよう指導(時には強制)することを言うのだそうです。「食育」という語は知っていましたが、完食指導は否定的な響きを伴っているらしく、幼時の体験がトラウマになって、「…

ゴトジンの一夜

昨夜、高木浩明さんが資料調査のついでに、と仕事仲間を連れて来訪。五島ジンを吞みながら4時間ほどお喋りしました。 2人ともジンは初体験らしく、こちらも強い酒をいきなり呑ませていいかどうか分からないので、最初は小さな盃に、石榴酢とスダチ蜂蜜とで…

國學院雑誌1403号

國學院雑誌3月号が来ました。スピアーズ・スコットさんが「和歌の研究と電子資料」というコラムを書いていて、国歌大観のオンライン検索を例に、作品検索、語彙検索、人名検索のほかに人間関係をグラフ化することもできるようになると、もっと便利になるだ…

殿

福島県の相馬の旧藩主(34代目)が、東北大地震後、復興に尽力した話が新聞に連載されていました(「「殿、ご帰還」再起の福島」朝日朝刊経済欄 2024/03/12~16)。まるで読み物みたいに面白い記事でした。 相馬は騎馬武者が神旗の争奪戦を繰り広げる野馬追…

こちらのQRコードから

NHK-TVの番組を視ていて、最近いらっとさせられるのは、屡々司会者が片手を挙げて「詳しくはこちらのQRコードから」と、平然と言う場面です。我が家にはスマホがありません。しかしNHKの受信料は年間前払いで払っています。NHKとの契約は、スマホがあること…

開花前

東京の桜開花予想は、19日、22日、24日と遅れて行っています。播磨坂へ、買物のついでに花見の下見に行きました。バスを降りて眺めると心なし並木の枝先が桜色にうるんでいるように思いましたが、樹下を歩いてみると蕾の輪郭はくっきりしているものの…

マドレーヌ

最近のTVには他人の生活を見せて貰うドキュメントが多く、ドラマチックな話が結構あります。制作側が意図して盛り上げているのが分かると興ざめですが、偶然そういう話題に辿り着いた場合には、リアル感が増し、印象がつよい。殊にテレビ東京には「車代を払…

信濃便り・山茱萸篇

長野の友人から、写メールが来ました。 信濃の早春 【山麓に住む中学の同級生から、野菜を掘り出したから取りにくるようにとのショートメールが届きました。当地では、冬の期間、保存用に土中に大根などの根菜類を埋める習慣があります。日時を決めて友人の…

長門切「三十騎には」

平藤幸さんの論考「新出『平家物語』長門切の紹介と考察」(「国文鶴見」58号)を読みました。この度鶴見大学図書館蔵となった、5行の長門切の翻刻とその考察です。源平盛衰記巻35「粟津合戦」の一部、既出の切(鶴見大学図書館蔵「名乗て懸出」の数行…

102年目の魚屋

父の命日が近いので、花を買いに出ました。この近辺では頼れる花屋がなくなって、不自由しています。週末だけ出す店があって、品数は少ないが花が新鮮なので、まずそこへ行ってみました。黄色いフリージアがある。白か紫ならもっとよかったけど、父の好きな…