日々雑録

羊、鋼、そして森

宮下奈津『羊と鋼の森』を読みました。久しぶりに、文学に救われた気がしました。先々週、難しい事業を支えてくれるはずの人物に脚を引っ張られたりして、私もかなり参っていたからです。いい仕事に惚れて、それを助けたくて、自分自身も行く手に道がひらく―…

平家語りQ&A

6/10の芸能史研究会シンポジウムでの基調講演「平家物語諸本の展開と平家語り」について、メールで質問が寄せられましたので、応答の要点を紹介しておきます。 Q1:①配付資料の「年表」について確認したいことがあります。「1320年以後、『源平盛…

説話文学会

久々に、仏教資料一色番組でなかったので、説話文学会に出てみました。「判官物研究の展望」というタイトルのシンポジウムです。まずは最近入手したという「義経一代記図屏風」を紹介した小林健二さんが、『義経記』とは別に九郎判官の逸話を語る判官物の系…

君の名は?

昨年、区役所が道路脇に置いてある住民の鉢植えを片端から撤去しました。肉屋の前のガードレールに寄せてぎっしり置いてあった鉢は、近所のアパート住まいの女性のものだったそうで、「貰って下さい」という札が出ました。我が家では、匂い菫と擬宝珠の小さ…

そんなつもり

このところ、「そんなつもりじゃなかった」「そんな気持ちはまったく無い」という言訳にうんざりする局面が、遠近ともに多い気がします。じゃどんなつもりだったのか言ってみろ、と問い詰めたくなる、もしくは問い返すのもうんざり、という例も少なくありま…

絹と鉄

丸の内の日本工業倶楽部の1室で開かれた会議に出ました。お濠を見下ろす一角です。工業倶楽部のファサードには男女一対の像が乗っています。女性は絹織物を、男性は鉄工業を象徴し、丸の内を見下ろしています。日本の工業は絹と鉄が支えるのだという意味ら…

郷土資料の文学

野本瑠美さんの「崇徳院と和歌」(「国語と国文学」2月号)、「手銭家所蔵資料の研究と古典講座」(『地域とつながる人文学の挑戦』島根大学法文学部研究センター)を読みました。特に後者は、私自身の経験と重なる点やそれ以後の学問の変化と引き比べなが…

久しぶりの京都

芸能史研究会のシンポジウム「〈平家語り〉の展開と継承」に参加するため、昨日、久しぶりに京都へ行きました。梅雨空に台風接近という悪天候でしたが、新幹線の車窓から富士山がシルエットのように見えました。基調講演(『平家物語』諸本の展開と〈平家語…

写本の形態

佐々木孝浩さんの「平安時代物語作品の形態について―鎌倉・南北朝期の写本・古筆切を中心として-」(「斯道文庫論集」52)を読みました。佐々木さんはこのところ、本のかたちとその内容や格付との関係を追究しています。 平安時代の仮名散文作品について…

心敬の句表現

伊藤伸江さんから送られてきた「心敬の句表現―「青し」の系譜からー」(「日文協日本文学」 2017/7)を読みました。伊藤さんは、心敬が文明2年(1470)に自作の連歌と和歌に自注を付けた『芝草句内岩橋』を、このところずっと、先輩の奥田勲さん…

取り戻せるものならば

5歳の子が「もうおねがい ゆるして」とノートに書き続けて亡くなった、という新聞記事は涙なくしては読めません。未だ間に合うものならば、三途の川の手前まで追いかけて行って抱きとめたい。連れ戻したい。何より可哀想なのは、自分がいけない子と思い込ま…

戦後近松研究史の一側面

先輩の原道生さんから抜刷を頂きました。「戦後近松研究史の一側面(その4)―「近松の会」を中心に-」(「近松研究所紀要」28)という連載です。いわゆる歴史社会学派の旗手の1人だった広末保の軌跡をたどり、その点検と再評価を試みるもの。 鳥取大学…

泣くな女だろ

学会や会議が続き、普段とは異なるエネルギー消費で、ほとほと疲れました。定年後は、徐々にオーラを消していくことを心がけています。老人として街になじむには、現役時代、とっさに発揮できるよう用意していたオーラは邪魔だからです。が、オーラを失いす…

中世文学会

中世文学会2日目に出て、研究発表4本を聴きました。近年は資料紹介に類する発表が多く、仏教・説話・中世どの学会も同じような題目が並び、義務感を掻き立ててやっと出かけるような按配でしたが、今日は、中世文学に向き合おうとする姿勢が明確な発表が多…

琵琶

国立小劇場へ「日本音楽の流れⅡー琵琶ー」を聴きに行きました。今井検校の「竹生嶋」が目当てです。国立劇場へは何年ぶりでしょうか。席に着いて、プログラムを開いて、愕然。今井検校は休演、VTRで解説するとのこと。何があったのか分かりませんが、HPでで…

アマリリス

あちこちの軒先でアマリリスが咲いています。子供の頃、庭に造った円形花壇の真ん中に球根を植え、初めて咲いた時は家族中で喜びました。梅雨の晴れ間にぽっかり咲く、大きな花。野生の草花や和風庭園とは全く違う雰囲気の花でした。 当時は、オルゴールの「…

入梅前

屋内では雨が降り出してもなかなか分かりません。以前のように、路面が濡れると車のタイヤ音が変わることも少なくなりました。「お天気体感中継」なんて番組があるのもそのせいでしょう。数日前からムスカリの球根を掘り上げて干しているので、絶えず窓外を…

責了

3年越しの校正をようやく責了にしました。一昨年末の講演録をもとにした本です。当初「文学研究に未来はあるか」という題だったため、私は真正直に受け止めて平家物語研究の課題を整理して書き、そのまま留まってはいられないので、あちこちで続編、そのさ…

ゲ抜き

我が家のスパティフィラムが2輪、花首を伸ばしてきました。この花の名前がなかなか覚えられません。和名は笹団扇だそうで、これはまたあまりに直接的でつまらないし、やむなく「麵会議のゲ抜き」、と覚えることにしました。794平安、と同じ記憶法です。…

わかりやすさ

一世を風靡した「ヤングマン」は、つまらない歌だと思っていました。わかりやす過ぎるからです。歌手もそれほど巧くない。むしろTVドラマ「寺内貫太郎一家」の中で、「雨の日は煙草が美味しいのよ」と呟く年増の出戻り女性(演じたのはたしか太地喜和子だっ…

運動会の日

昨日の夕方のスーパーはちょっと様子が違いました。30~40代の女性たちがうろうろ、中には外国人もおり、夫が一緒の人もいます。通常、この時間帯にこの年代の女性たちは、目当ての棚が決まっていて、ささっと買い物を済ませるのですが、狭いスーパーの…

食卓の演出

かかりつけの医者がぎっくり腰になって入院しました。胃腸の具合や血流のことを相談する所存で行ったのに、当分診察はできないとのこと。とりあえず、「お大事に」と言って帰ってきました。2歳くらい年上の家父長型の医者だったのですが、新たにかかりつけ…

統計学

若い頃非常勤先で知り合った、専門や出身大学の異なる方々との、講師室の休憩時間の談話は、いま思うと貴重でした。もうどこでお会いしたか忘れてしまいましたが、大きな私大(法学部が有名)の統計学の先生と知り合いになったことがあります。全国を吹き荒…

緑の親指

梅雨空を思わせるような天候です。梔子の蕾が膨らんで来ました。年々樹が古くなって鉢が小さすぎるのは分かっているのですが、これ以上大きな鉢にすると、私の手で動かせなくなるので我慢させています。それゆえ、劣悪な環境下で蕾をつけてくれるのは嬉しい…

一杯の珈琲から

毎朝、一通り家事が終わると、珈琲から仕事を始めるのが習慣でした。仏壇にも上げます。親の世代は、珈琲が青春の思い出につながっているのか、特別な思いがあるようでした。生前、カップに珈琲を注ぐと、「もっともっと!喫茶店のはけちくさくて我慢できな…

ドレスコード

父が生きていた頃は、毎年、彼の誕生日(1月)と父の日(6月)に、ネクタイを贈るのが習慣でした。冬にはウールのカジュアル、夏には麻の単衣物とか、時にはちょっと変わった色をとか、選ぶ方は変化をつけようとするのですが、仕事社会にはそれなりのルー…

談笑力

近所のマンション建て替え工事が進み、敷地の境界ぎりぎりまで造った外郭ができあがって、空地がないため、諸々の作業を我が家の窓下の駐車場でやるようになりました。工事関係者の10時、昼、3時の休憩には円坐を組んでの談笑がうるさい。座中には必ず、…

桜の実の熟する時

朝、長泉寺へ山桜を見に出かけました。そろそろ実が熟する時かと思ったのです。春先の花の時季には毎朝見に行くのですが、葉桜の間は全く寄りつかず、実がなるのかどうかも知らずにいました。葉隠れに赤や黒の熟した実が点々と見えます。戦時中に若木を植え…

『新猿楽記』に見る下級貴族たち

『下級貴族たちの王朝時代―『新猿楽記』に見るさまざまな生き方』(繁田信一 新典社)を取り寄せて読みました。私が知りたかった琵琶法師を含む芸能者のことは、詳しくは触れられていませんでしたが、買ってよかった(¥1620)と思いました。 文字が大き…

応募書類

このところ、申請書類や応募書類を見る機会が続きました。何とも理解出来ないのは、引用文献名の注記方法など、独善的な記載が多いことです。企画や趣旨を説明する大事な文章を、過去のものから抜粋してそのままコピペしたのでしょうか。 例えば、「大谷20…