雨月物語

長島弘明さん校注の『雨月物語』(岩波文庫)が出ました。かつて鳥取大学を離任した際、後任が来るまでの集中講義を近世は長島さん、中世は佐藤恒雄さんにお願いしました(なんと豪華な顔ぶれでしょう!)。学生たちの評判は、とてもわかりやすい講義だった…

納税義務

確定申告をしに税務署へ出かけました。親の家を処分したので今年は用紙の入手から、複雑な計算方法を理解するまで、10日以上かかり、その間ずっと、重くて暗い気分の日々でした。税務署では相談中も書類記入にも待っている間も、座らせてくれず、1時間半…

膏薬

今年の冬は一際寒い、というのがどこの店へ入っても挨拶代わりになりました。例年、手袋なんかしたことは殆どなかったのに、今年ははめずに外出するとたちまち指の関節にひびができて、痛い。ハンドクリームを塗ってもなかなか治りません。 子供の頃、祖母は…

羊羹

芥川龍之介の書簡集に「羊羹をありがとう(こう書くと、羊羹に毛が生えているような気がしてならぬ)。」という礼状があります。芥川も漱石も、胃酸過多で悩んでいたのに、なぜか甘い物を貰って書いた礼状が多い。周囲も気が利かないなあ、と以前は思ってい…

標準服

生涯で制服を着たのは高校3年間だけです。都立の中でも当時は極めつきの進学校、「標準服」だということになっていましたが、私服は許されず、冬にカーディガンを羽織っただけで厳しく追及されました。男子は詰襟のセルロイドの芯が痛い(喉仏が大きくなる…

ウィスキーボンボン

聖バレンタインは伝説の多い人らしく、小鳥たちに愛されたとされ、鳥に囲まれて説法する絵を見たことがあります。弊国で言えば良寛さんのような人でしょうか。この時期は日脚も延び、鳥たちの恋が始まるので愛の記念日になったのだという説明を聞いたことが…

立雛

確定申告に必要な書類を捜索したついでに、納戸で雛道具の箱を開け、いつもとは違う雛を出すことにしました。母が嫁入りに持って来た親王雛は100年以上経って、鼠に鼻を囓られたりしているので、例年大内塗の達磨型の親王雛を飾っていたのですが、今年は…

蹌踉蹣跚

高田馬場のメキシコ料理店で、3人の女子会(年齢幅34年)をやりました。この春定年になる方のご苦労さん会のはずでしたが、あれこれ話がはずむ内に、それは忘れられました。退職記念旅行の話、蔵書処分の話、今の学界の話、理想的な教師とはという話、国…

従妹たち

従妹の一周忌が近いので、別の従妹と連れ立って、お仏壇に線香を上げに行きました。昨夏3人目の孫が生まれて、元気な男の子たちの作り出す、明るく力強い雰囲気が救いでした。生命の鎖をつなげていくのが、死者への最大の貢献なのかもしれないなあ、と思い…

時計台

東北新幹線の下りで東京駅を出てすぐ、ビルとビルの切れ目から、服部の時計台がちらりと見える所があります。宇都宮に通勤していた時は、授業は2限目からでしたが、万一の時に間に合わないといけない、と朝6時台の新幹線に乗ることにしていました。朝食の…

いじめ

小学5年の二学期に、湘南の茅ヶ崎から東京の小石川へ転校しました。ポマードで頭を固めた担任が、近所の素封家の一人娘(Qさんとしておきましょう)の隣に席を決めてくれました。転校生の面倒をみてあげなさい、という意味だったのでしょう。彼女はクラスの…

中世芸能史の研究

必要があって、芸能史のおさらいをしています。最近の沖本幸子さんたちの研究から(本ブログ1/29,2/01参照)遡って、岩橋小弥太『日本芸能史―中世歌舞の研究』(日本芸苑社 1951)、林屋辰三郎『中世芸能史の研究』(岩波書店 1960)までた…

古活字版悉皆調査目録

高木浩明さんの「古活字版悉皆調査目録稿(9)」(「書籍文化史」19)を見ました。今回は静嘉堂文庫の調査が中心です。 静嘉堂には院生時代、『国書総目録』制作のアルバイトで通いました。編集部の質問カードに、実際の古典籍を調べて回答を書き込むアル…

石窯漁

ある冬の寒い日、鳥取のスーパーの棚に金銀の鱗が輝く魚が2匹、トレイに載って売られていました。体長は優に20cm以上あります。何だろう?金魚にしては大きすぎる。飾り物にしたいように綺麗です。ふと前日の「ニュース645」で、湖山池の石窯漁が報…

平成30年度奨学基金

平成30年度公益信託松尾金藏記念奨学基金の募集が始まりました。本基金は、人文系大学院生に向けた給付型の奨学金です。募集要領や応募書類は、三菱UFJ信託銀行のHPに掲載されています。「三菱UFJ信託銀行 公益信託 奨学金」というキーワードで検索できま…

続・峠越え

太平洋側からバスで鳥取へ入って行く時は、峠を越えた途端に川の流れが逆方向になり、分水嶺を越えたことが分かりました。もう一つ、山陰へ入ったのだと分かるしるしがあります。森の美しさです。山陽側は森林が荒れているが山陰側は手入れが行き届き、林業…

峠越え

このところ毎朝整腸剤代わりに飲んでいる牛乳が切れたのに気づき、雪の合間を縫って買いに行くことにしました。鳥取仕様のゴム長(魚河岸で履いているような長靴です)を履いて、恐る恐る出かけました。児童遊園にはさすがに人影はありませんでしたが、子供…

中世芸能の異性装

辻浩和さんの論文「中世芸能の異性装」(「アジア遊学」 2017/6)を読みました。12世紀から13世紀にかけて流行った白拍子の男装は、じつは男装としては不完全なものであったと述べています。鎌倉時代になって白拍子は、成人男子の身分標識であった…

あんみつ

区役所へ用足しに行ったついでにスーパーへ、叔母の命日の御供物を注文しに行きました。戦後、女手一つで3人の子を育て、地元福岡市の母子家庭福祉にも尽力した人です。大家族を率いて威厳があったので、兄に当たる父は、「昭憲皇太后」と渾名していました…

人と書と

田代圭一さんの『人と書と―歴史人の直筆』Ⅱ (新典社)という本が出ました。田代さんは宮内庁書陵部にお勤めで、書誌学に詳しく、ご自分でも書をたしなまれるので、いろいろな形式の、先人の書の写真を贅沢に掲げ、解説をつけて、2冊目として出されたのです…

乱舞の中世

沖本幸子さんの『乱舞の中世』(吉川弘文館 2016)と『今様の時代』(東大出版会 2006)を併せて読みました。面白かっただけでなく、いかに芸能研究が沃野であるか、また自分が最新の研究動向に疎くなっていたかを思い知らされました。 同時に平家物…

沈丁花

郵便局へ用足しに行ったら、児童公園の植え込みの沈丁花の蕾が目につきました。庭木にもはやりすたりがあるようで、一時期はどこの垣根にもあり、一期校の入試の頃(3月上旬です)咲き始める花でしたが、今は珍しくなりました。 高校2年の時、部活でいわゆ…

ワッフル

同い年の友人と会って、この春計画している小さな集まりの打ち合わせをしました。街は冷蔵庫の中のようです。昨夏開店した、ワッフルが売りのカフェに入りました。友人はこれから新年会に行くというので、1皿を分け合うことにしたのですが、けっこう量があ…

お濠の氷

記録的な大寒波到来なのだそうで、我が家ではベランダのジュリアンの花が凍ります。花弁の厚い種類やビオラは平気なのですが、薄いひらひらした花をつける種類は、朝から萎れ、立ち直るのにほぼ一日かかります。今年は8株も植えてしまったので、室内へ入れ…

息が大気になるまでに

ポール・カラニシ『いま、希望を語ろう』(田中文訳 早川書房)を読みました。壮絶な本です。邦題はよくない。「When Breath Becomes Air」が原題。帯にある「末期癌の若き医師が家族と見つけた生きる意味」などという美談めいた、いか…

この雪いかが見る

同い年の友人から、メールが2通来ました。書いてある用件はほぼ同じなので、さては呆け始めたかな、と読み直したら、2通目には「昨日の雪はいかがでしたか」という1文が入っていました。 そういうわけか、と返信を書くために『徒然草』正徹本を取り出して…

高下駄の雪

雪の翌朝は(出勤の苦労がなければ)、何故か浮き浮きし、遠いことを思って懐旧的になります。子供の頃、湘南に母方の実家の別荘があって、その離れに間借りしていました。大雪の朝、母屋から従姉の1人が高下駄を履いて様子を見に来ました。小さな離れでし…

積もる雪

東京は予報より早く雪になりました。細かくてせっせと降り続ける、積もる雪です。 鳥取に赴任して初めて雪が降り出した午後、いつものように研究室で仕事を片付けていたら、向かいの部屋の助教授(菅原稔さんです)が扉を叩き、この雪は積もる雪だから早く帰…

野中の一軒家

我が家の西側にマンション建設が進んでいるのですが、あまりに乱暴な音を立てる(8階建ての足場の上から鉄パイプを投げ落とすなど)ので堪らず、現場責任者を出せ、と掛け合いました。 未だ学生上がりのような若い監督で、しかもマスクをしたまま応対し、ほ…

大試験

俳句の季語に「大試験」というのがあります。卒業試験や入試などを指すらしい。春の季語ですが、現代では全国一斉のセンター試験が該当するでしょうか。南北に長い日本列島でこの季節に、秒単位で全国一斉の大試験というのにはそもそも無理がある、在宅端末…