贈る言葉

成人式や卒業式の季節には、大人から新人に贈る言葉があちこちで見聞きされます。学部を出る時に唯一耳に残ったのは、国語学の市川孝先生の謝恩会でのスピーチ。「社会に出ると、事ごとに対立する相手に出会うことがある。その時は、あの人が私を嫌うはずが…

風葉和歌集

三角洋一・高木和子著『物語二百番歌合/風葉和歌集』(和歌文学大系50 明治書院)が出ました。故三角洋一さんの遺稿を高木さんが補充し、分かりやすくまとめた解説が付されています。月報には三角美冬さんが「夫を送って」という追悼文を書いていて、最も…

扇の国

人から勧められて、六本木のサントリー美術館「扇の国、日本」展を観てきました。暖かい土曜の午後で、街には幸せそうな人々が三々五々、出歩いていました。この美術館が移転してから初めて入るので、きょろきょろしながらチケットを買い、上下階に亘る展示…

美容師の正月

近所の美容院へ調髪に行きました。いつ行っても待たされることのない、つまり客数の少ない美容院で、主は若く見えるが60代になったばかりの、地元出身の美容師です。妻子は近所で妻の親と同居し、自分は母親の店を継いだらしい。家事一切をこなし、買い物…

ながらとストロー

子供の頃、ストローは本物の麦藁を綺麗に切り揃えたものでした。勿論、商品です。束で買うのですが、保存に留意しないと中に黴が生える。使う時は、必ず中空部分を覗いてから吸いました。その後防水処理をした紙製になり、プラスチック製になりましたが、子…

明日へ翔ぶ5

論集『明日へ翔ぶー人文社会学の新視点ー』第5巻刊行の準備が始まりました。今回の論集に執筆できるのは、基金から奨学金を受け、原則として2017~19年3月に修了した方々と2020年3月に修了見込みの博士課程の方々を中心に、31名です。該当者…

小正月

小正月の会をしました。まずは軍記物語講座第1巻の付録作りの打ち合わせ、次いで源平盛衰記の古活字版と整版本の間をどう究明していくかの打ち合わせをやってから、よもやまの話と共に酒肴を準備しました。 酒は新潟から届いた「おりがらみ生原酒高千代」と…

コミュ力

昨年末からずっと、迷っていたことを書いてしまいます。手短かに書くことが難しいし、ゆかいなことでもないし、でもやっぱり見逃せない。 女性を医学部入試で差別した言訳ー女性の方がコミュ力が高いから。尤もらしい言い方をしたつもりでしょうが、つまり、…

分を知るカップ

東京は終日、寒くて暗くて湿っぽい1日でした。午前中に初雪が舞った、との報道もありました。30年前、鳥取で暮らしたアパートにはエアコンがなく(ガスストーブでしのいだ)、結構すきま風も入ってきて、冬は寒くてつらく感じました。 当時仲の良かった日…

写真を撮る

行きつけのクリーニング屋に行ったら、新年らしく富士山の写真が何枚も飾ってありました。主の趣味が写真撮影なのです。なかなかいい写真もあり、黙って帰るわけにはいかないので、水を向けたところ、いつもはクールな商売人なのですが、忽ち早口になり、ダ…

おやつ

小学校低学年までは、お八つを貰いました。梅干しを竹の皮に包んだもの(三角に折った竹の皮の隙間からちゅうちゅう吸うのです)のこともあり、夏は作りすぎたトマトのざく切りとぶっかき氷がどんぶり一杯、ということもありました。高学年になってからは、…

平家物語作者とは

松田浩・上原作和・佐谷真木人・佐伯孝弘編 『古典文学の常識を疑うⅡー縦糸横糸で織りなす文学史入門』 勉誠出版 (A5判 2019/5刊行予定 予価¥2500) 中世文学編の内容 京極派和歌の独自性(阿尾あすか)・早歌と軍記物語(岡田三津子)・擬古…

サブカルの本説

『ジーヴズの事件簿』(文春文庫 2011)を読みました。P.G.ウッドハウス作、岩永正勝・小山太一編訳の「才知縦横の巻」「大胆不敵の巻」の2冊です。リタイア後の楽しみとして挙げられる、やや古めのエンタメ小説って、どんなものだろうという興味から求…

太平記三本対照表

軍記物語講座第3巻『平和の世は来るかー太平記』の付録として、三本記事対照表を載せる計画を立て、その打ち合わせに出かけました。厖大な記事量を擁し、しかも諸本の関係や、通読しやすいテキストについて十分知られているとは言い難い太平記の場合、こう…

源平の人々に出会う旅 第24回「倉敷市・水島合戦」

寿永2年(1183)閏10月1日、屋島にいた平家が京ヘ進撃すると聞いた義仲は、海野幸親と矢田義清を派遣し、両軍が備中水島で激突します。 【玉島港】 現在、この付近は凹凸の多い地形ですが、当時は大小の島が浮かぶ海面でした(近世以降、干拓が行われてきまし…

国際家族

3通目の電子年賀状は、合衆国のマサチューセッツから届きました。 鳥取で教えたゼミの卒業生です。着任1年目のゼミ生は、私の顔も知らずに(所属ゼミは前年度末に決めなければならないので)入ってきた、個性の強い女子学生たちでしたが、その中の1人でし…

実生の苺

この冬は初めに暖かい日が続いたせいか、我が家のベランダは暦が微妙にずれています。最後の薔薇の花はリルケの命日(12月29日)に間に合わず、今ごろようやく色づいてきました。菊の葉はきれいに紅葉せず、日々草が貧弱ながら未だ咲いています。順調な…

マンガで?マンガに?

鈴木啓子さん監修『マンガで楽しむ名作 日本の文学』(ナツメ社 2018)という本が出ました。坪内逍遙から坂口安吾まで45人の近代作家を取り上げ、その作品を選んで要約をマンガと解説で示し、作家図鑑や略年表、文芸思潮相関図などをも収録した、欲張…

電子年賀状

元旦に2通の電子年賀状を貰いました。1通は能が専門の山中玲子さんから、アニメ風の少年が豚(猪?)に跨がり、菊の花束を捧げている図柄。菊慈童に見立てて、お互い長生きしようね、とのメッセージだと読みました。 もう1通は、国際結婚して正月は英国で…

年賀2019

あけましておめでとうございます。 定年後2、3年間は「老人」になる努力をしましたが、昨春から後期高齢者になり、体力的にも外観もまさしく老人になりました。しかし仕事の上では、芸能史研究会や和歌文学会で講演したり、源平盛衰記の書誌調査に行ったり…

衝撃の大晦日

例年通りのつもりで年越し蕎麦を食べに出かけたら、蕎麦屋はラーメン屋に改造中でした。学生時代から50年来行きつけだった蕎麦屋です。呆然としました。今年は年越し蕎麦は抜きか、と思いましたが、ちょっと脚を伸ばして、大通りのゆで太郎(この店もいつ…

小学生の時、給食で最大のご馳走は「鯨の竜田揚げ」でした。尤も今と違って、揚げ物はなかなか食卓に上らず、肉は勿論特別のご馳走でしたから、鯨肉が好きだったというわけではなく、臭味を消した竜田揚げなら子供の舌にも美味しかったのです。 我が家は九州…

ぎりぎり

やっと賀状を書き終わり、本日最終の集配にぎりぎり間に合うよう、投函しました(もし元日に間に合わなかったら、皆さま御免なさい)。暗くならないうちにと、慌てて注連縄を買いに出かけました。例年、薬師堂の前に小屋を建てて売るのです。街は人少なにな…

年越しの買い物

特定健診の結果を聞きに行きました。よく晴れて、風が冷たく、いかにも年の瀬らしい朝です。結果はほぼOK、腫瘍マーカーも異常なし。でも、ばりばり働き、きゅっと呑んで、明日もばりばり・・・という生活は、もう過去のものとなったようです。 本屋へ寄って…

無常の鐘声

軍記物語講座第2巻『無常の鐘声―平家物語』 松尾葦江編 花鳥社より2020年春刊行予定 まえがき 佐倉由泰 平家物語の軌跡 松尾葦江 平家物語の古態論と延慶本 佐伯真一 延慶本平家物語の伝来と流布―現存本遡及の試み 久保勇 源平盛衰記の成立 岡田三津子 …

俊成とその周辺

中村文さんの「藤原清輔が見ていたものー『奥義抄』後拾遺集歌注釈をめぐってー」(「武蔵野文学」66 特集「藤原俊成とその周辺」)を読みました。 藤原俊成と同時代に歌壇の指導者として活躍し、しかし実作者としては後代さほど高く評価されなかった藤原…

治世と文化

呉座勇一さんが「歴史家雑記」という新聞コラムで、次のようなことを書いていますー室町時代の政治を肯定できない戦前の歴史教育は、代わりに文化を賛美した。義政の時代の東山文化は、和室・和食・茶の湯・生け花など日本の生活文化の源流として特筆された…

保元物語伝本考

早川厚一さんの「ー書評ー原水民樹著『保元物語』系統・伝本考」(「名古屋大学国語国文学」111)を読みました。書評と言うより紹介が主ですが、660頁にも及ぶ大著のエッセンスを明示してくれています。 そこにも書かれているように、『『保元物語』系…

勉強会×2

午前中は、八重洲の会議室を借りて、早川厚一さん・谷口耕一さん・清水由美子さんの3人に来て頂き、「注釈をやってみてわかったこと」というタイトルで保元・平治物語の座談会をやりました。軍記物語講座第1巻『武者の世が始まる』(2019年刊行予定)…

日本語教育

出入国管理法改訂に関する政府の態度は、ひどいものだと言わざるを得ませんでした。移民政策はやらない、と言いながら人手不足解消のために、と急ぐ(矛盾しています)。法案の根拠となるはずのデータは不十分か不正確だし、具体策を訊かれると、なにもかも…