卒論指導

松薗斉さんが自著のあとがきで、学部時代の卒論の思い出を書いているのがほほえましく、ちょっぴり苦く(似たような覚えが誰にもあるはず)もあります。指導教授の川添昭二先生に、早歌(宴曲)研究をしたいと申し出たが、微笑まれるばかりで何も返事されず…

佳日

よく晴れた穏やかな日、朝の家事を済ませて腰を下ろし、珈琲を淹れる頃、宅配便がやってきて、仕事仲間からの献本を届けてくれる。期待に満ちて包装を解き、紙の匂い立つ新本を開いて、まず目次、まえがき、あとがきを読み、再び目次に戻ってきて、どういう…

中世の女房

松薗斉さんの『中世禁裏女房の研究』(思文閣出版)という本が出ました。550頁近い、持ち重りのする本です。装幀は瀟洒ですが、中身はびっしり。序章「中世の内裏女房を理解するために」から始まって、1内侍の職務と補任 2中世の内侍の復元 3大納言典…

石蕗

石蕗の花が咲き始めました。東京では日本庭園の置石の裾に植え込んだりしますが、九州では山に自生し、茎を食用にします。庭にもよく植えてあります。親族の話では、河豚の解毒剤になるので、植えておくのだとか。 かつて下関や博多では、魚屋で買った河豚を…

ランチにワインを

朝から新しいプロジェクトの打ち合わせが続き、久しぶりで、がっつりランチ。本郷通りへスパゲティを食べに行きました。私はキャベツとからすみの1皿、相棒は菠薐草と桜蝦の1皿。白いポタージュにオリーブオイルをたらしたものが出たので、確かめるとさつ…

幸若舞の展開

須田悦生さんの『幸若舞の展開―芸能伝承の諸相―』(三弥井書店)という本が出ました。須田さんは福井の名家のご出身だそうで、よく学会の後の酒席などで御一緒しましたが、もの静かでしかし暗くなく、温和で、いかにも良家の雰囲気を漂わせている方でした。…

花鳥社

国文学専門の出版社がひとつ、この秋から活動を開始しました。 (株式会社)花鳥社 153-0064東京都目黒区下目黒4-11-18-410 電話 03-6303-2505 ファクス 03-3792-2323 国文学とその関連分野を中心に、企画・編集・出版をやるそうです。社名は何だかオトメチ…

古今伝受

鶴崎裕雄さんと小高道子さんが編んだ『歌神と古今伝受』(和泉書院)という本が出ました。古今伝授(授ける側からは「伝授」、受ける側からは「伝受」)とは、『古今和歌集』を中心とする歌学上の諸説の一部を秘伝化し、師から弟子へと口伝や切紙、抄物のか…

野党はあるか

米国ではねじれ国会誕生で、今後ますます、口汚い演説をニュースで視ることになるのかと、やるせない気になります。しかし翻って脚下を見ると、いま日本に野党はあるのか、と言いたくなるような現状です。 国会中継を視ても、どうでもよさそうなことばかりを…

就職面接

我が家では正月2日にめいめい墨を擦って、書き初めをしました。ある年、私が『万葉集』の「君が行く道のながてを繰りたたね焼きほろぼさむ天の火もがも」(巻15 狭野弟上娘子)を書いているのを見た父が、その歌は就職面接の時に訊かれた、と言うのです。…

夕陽

我が家の仕事机は、間取りの都合ですべて東向きの窓の下に据えてあるので、夕方には一時的に仕事ができなくなります。本郷通りに並ぶ高層ビルの窓硝子に夕陽が反射し、眩しくて目が開けられなくなるからです。やむなくその間は、家事や買い物に当てることに…

一房の葡萄

初夏と晩秋は果物の彩りが楽しめる季節。我が家は毎朝果物を食卓に出し、仏壇にもつねに果物を上げてあるので、スーパーや八百屋の店先が気になります。いまは輸入物の葡萄が年中出回っていて、大きな粒を皮ごとむしゃむしゃ食べるようですが、いまいち葡萄…

学びの原点

「國學院雑誌」10月号が届き、中でも川合康三さんの「渋谷で中国古典を読む」と飯倉義之さんの「日本色話大成序説―研究史の整理から―」2編が印象に残りました。 川合さんは渋谷へ赴任して3年目、現代文化最先端の街で、時代遅れの古くさいものに見える古…

源平の人々に出会う旅 第22回「鎌倉・征夷大将軍」

寿永2年(1181)7月、入京を果たした義仲でしたが、帝位争いで北陸宮(以仁王の遺児)の擁立に失敗します。『平家物語』では、義仲の田舎育ちの粗野な言動が強調されています。 【大蔵幕府・東御門跡】 いっぽう頼朝は、鎌倉に大蔵御所を建て、着々と地盤固…

小春日和

初めて家を買ったのは34歳の時、横浜の青葉台でした。近くに同年代の同業者が3家族もいて、軍記村と称してよく往き来しました。正月には我が家で新年会もしました。しかし1人はアル中で亡くなり、1人は肝炎で亡くなり、もう1人は愛妻が動脈瘤で急死し…

後期軍記

必要があって、後期軍記の研究状況をおさらいしています。笹川祥生・松林靖明・梶原正昭さんの著書や古典遺産の会編の事典類、雑誌「国文学」の特集「軍記物語―エポックをおさえる」(2000/6)や「軍記と語り物」の研究展望・研究文献目録など。後期軍…

親父バンド

本ブログの28日、29日付記事を読んだ知人友人からメールを貰いました。親子になるということ(子は親を選べないので、正確には「親になること」です)を、経験者も未経験者もそれぞれに、重く受け止めてきたのだなあと改めて思いました。 5歳若い知人か…

子供の頃は柿を食べると何故か、お腹を壊しました。ある時、柿の形をした和菓子を食べてやはりお腹を壊し、子供心にもこれは気のせいだと思って、柿を恐れなくなりました。講談で、刑場に引かれる武士が最後の食事に柿を出され、腹が冷えるから、と言って辞…

温かな手で

信濃毎日新聞取材班『不妊治療と出生前診断―温かな手で』(講談社学術文庫 2015)を読みました。信濃毎日は今年の8/3から10/12まで、「どう考える?新出生前診断―導入5年の広がり」という記事を連載したのですが、その元には本書があるから、と友人…

21トリソミー

長野に住む友人から、信濃毎日新聞の切り抜きを送って来ました。スマホで音楽を聴きながら嬉しそうに談笑する母子の写真が、大きく載っています。見ているこちらも釣り込まれて笑顔になるような、幸福な母子像です。 友人にとっては、姪とその長男(5歳)に…

空港の鴉

前回、秋田で中世文学会が開かれたのは40年前でしょうか、未だ秋田新幹線はなかったので、飛行機で行きました。空港からタクシーで大学へ向かう途中、運転手から、鴉は頭のいい鳥だねえ、という話を聞かされました。 空港は造ったが1日に飛来する飛行機が…

秋田の餅

京都行きの切符を買いに、東京駅へ出かけました。『太平記』のシンポジウムを傍聴するためです。外人が多く、みどりの窓口は混んでいました。30分ほど並んで切符を買い、通路脇にある紀伊國屋で、地方名産品を物色しました。どこも地下興しで、さまざまな…

茹で玉子

退職したら、ちゃんと家事をやろう、朝のスープもだしからとって・・・と思っていたのに、ふと気がついたら逆になっている。量り売りの総菜や弁当屋の白飯を、夕方慌てて買いに行くことが珍しくなくなりました。 朝起き抜けに益子のマグカップで牛乳を飲むの…

平家歌壇

中村文さんの「経盛家歌合の性格―<平家歌壇>の再検討」(『変革期の社会と九条兼実―『玉葉』をひらく』(勉誠出版)を読みました。かつて谷山茂氏が、永万から治承に至る時期に、平家一門の権勢を背景とする「平家歌壇」があった、とされたのは果たしてほ…

コンポート

ラフランスのコンポートを作りました。かつては高級果物だったラフランスも、最近は百均やスーパーに安く出ていることがありますが、表皮の色は熟しても、剝いてみるとがじがじ、馬鈴薯のようだったりする。ああ、安物買いの銭失いをしてしまった、と落ち込…

この季節、栗が食べたくなります。子供の頃は栗剥きを手伝わされました(栗剥き、豆剥き、もやしの髭根や絹さやの蔓取り、小豆や米の選り分けなどは子供の仕事でした。当時は、配給米に小石や虫が混じっているのが当たり前だったのです)。季節ごとに炊き込…

市ヶ谷の富士

軍記・語り物研究会に出かけました。会場は市ヶ谷の法政大学ボアソナードタワー。タワーの上へ昇ると、眼下は雄大な大都市東京です。外堀の水が緑色に光っていました。快晴で、富士山や筑波山がよく見えます。5日前に東名の正面に見た富士は、もう真っ白に…

列叙の表現史

佐倉由泰さんの「中世の列叙―世界を表象する知の祝祭―」(「文学・語学」222号)を読みました。『新猿楽記』『遊仙窟』『玉造小町壮衰記』『三教指帰』『雲州往来』『桂川地蔵記』『大塔物語』『長倉追罰記』『文正記』『曽我物語』『天正記』『堤中納言…

羅馬のきのこ

英文学の多ヶ谷有子さんから、きのこの思い出を綴ったメールが来ました。栃木のご出身なので、乳茸、ハナイグチなどきのこには詳しいそうです。でもお子さんたちは、茸は宇宙人の食べ物だと言って、食べないとのこと。 「1年ほど住んだローマでは9月、10月…

きのこ狩り

今年はきのこの当たり年だそうで、山へ入って遭難する人が多いとか。長野の友人のメールによれば、死者は高齢者ばかりではなく、半端でない人数だそうです。山の恵みの豊かな所に育った人にとって、その季節に山菜採りやきのこ狩りへ出かけるのは、一種の本…